未題

短編より短い短編小説

打って、響く。

 文学を笠に着て長らく立て篭もりつづけた精神を開け放つには、示唆的表現の内包する痛々しさに一度目を向ける必要がある。愛だ執着だ生だ死だの、そんなことを語るより先にごはんをたべてよくねむる。
 だからといって、振り返り浮かぶその恥についてわたしは気兼ねしない。ある種のトランスが相手にとり非常に奇妙な悲劇或いは喜劇をみせていたとしても、わたしはその馬鹿馬鹿しさまで受けとめる。

 だれになんと言われようとも、精神の在り方によってひとは変わる。どれだけ自分事とし人生を全うできたかにより結果が変わる。だからわたしは譲らない。

 「甘えんな。」

 感情をそのまま相手にぶつけるのはとてもひさしぶりだった。夜中あれほど彼について悩み、考え、理性でひと間、その特性におもいを巡らせ放ったことばとはいえ、わたしにとりそれはかなり大きな懸けだった。

 相手が拒絶したら基本的にひととひととの関係はおわる。わたしがそれをいくら愛だと訴えても、受け手にとりそうでなければ意味がない。或いは、時に自らの欠落について残酷的に向き合わなければならない。
 わたしは一昨日の晩からつづいた拒絶反応による自己の揺らぎをもう一度思い出した。彼にとり大切な価値観を浸食されたのと同じく、先日反発し合ったわたしの精神もずいぶんと荒れ狂った。

 わたしはここ数年、すこぶる本気でやってきた文学的領域における小説家の滑稽について、本気で受けとめなければならなくなった。その類いの人間にとりもっとも価値を置く世界から一旦外に出て、自らの虚言を戒めなくてはならなくなった。
 虚構を上塗りする感覚、或いはそれを真実と疑わない思い込み、本気を空振りされる哀しみとか、とはいえ事実空っぽの文字の羅列。

 ここまで考えてわたしはようやく、思春期にありがちなナルシシズムに満ちた空想、或いは嗜好を揶揄する精神を思い出した。また、実際それを批判する過去の自分を思い出した。

 いいか。純文学なんてどれもそれっぽく書かれているただのゴミクズだよ。

 「ありがとな。」

 過程を踏んだ成果かはよくわからない。それでも彼は結果として直球勝負に応じてくれて、最後には感謝まで伝えてくれた。わたしは恐縮し、ありがとうとおもう。耳を傾けてくれてありがとう。
 わたしだけでは絶対に成立し得なかった現実を乗り越えたから、きょうのごはんがとてもおいしい。