未題

短編より短い短編小説

ゆらぎ

 自分が弱いとおもう。承認欲求に塗れている。顕示する自己がなくとも、気づけば他者を求めている。反応がないと不安になる。

 「自分を大切にしてね。」

 何度言われても、どうすればいいかわからない。

 「自分を大切にしてね。」

 他者には伝えられるそれを、自分自身に伝えることができない。

 「自分を大切にできないひとが愛だとおもっているものは、たいていが依存か執着だよ。」

 わたしは自分の依存も、執着も、どちらもおんなじくらい感じる。依存され、執着され、その重みをわかっているくせ、他者にもそれを求めたがる。

 きょう降り過ごした2回目の電車に涙ぐんで、どんなに突き詰めても自分はちっぽけだと知る。近づきすぎて怪我を負わせるくらいなら自分が怪我するくらいがいい。それでも自分が怪我をすると、またひとに迷惑がかかる。やっていることの矛盾とか、うまくいかない身体とか、でも、楽になりたくはない。つながっていきたい。

 振りかざす正義の歪みが気になる、省みるのは自己、自己、自己、他者に求めても辛い。
 こんなに幸せなのに、実感があるのに、こころは泣いてばかりいる。なにに泣いているのか、哀しいのか、わたしにはよくわからない。ただ、堰き止めつづけたなにかが溢れんばかりにわたしの心臓を押し流して、つぎからつぎからこぼれるのだ。

 魘されて夜中目覚めると、そのさびしさにまた泣ける。だれかを切に求めても、そのだれかはどこにもいない。自分はいったいどうしてしまったんだろう、このままではほんとうにおかしくなってしまうんじゃないか。

 ほしいけれど、ほしがるには責任が要る。ほしいと言って、ポイしておわりにもうできない。かと言ってこの哀しみに堪えられない。なにかの間で引っ張られて、自分が引きちぎれそうだ。
 だからまた泣く、声をあげる。さびしい。

 いままでどうして気づかなかったのか、どうしてこんなになるまで放っておいたのか、或いは愛に塗れた日常に欠けざるを得なかった避けがたい自分自身に気づいてしまう。

 そんなこと言えない。

 ずっとずっと羨ましくて、それでも頑なに拒んだなにかを、わたしはもうすぐ受け入れなくてはならなくなるのかもしれない。かといってひとたび開け放てば、もうこの自分とは袂を分かつことになる。
 揺れる情動のなか、わたしには未来がみえない。せめて穏やかであれ、そう願うしかない。

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