未題

短編より短い短編小説

覚悟のアップデート

 頭が弾け飛んだ、同時にスマホをなくした、歯がぽきりと折れた。物事は連なるものだ、或いは、それまで頑なに拒んでいた力が反作用で瞬発する。懐疑的である、故に妄信的である、二律背反する思想のバランスが取れるときひとははじめて素直になれる。含蓄することばを汲む、すべてにおいて観察する、理屈を、筋を、落とし込む。あらゆるところに糸口は用意されている。
 背負うとは簡単なことではない。何年もかけイメージトレーニングを積んだそれは、想像を容易に超えていく。いつでもあるチャンスの芽を自ら刈り取る、ことさえ気づかず、落としたことにも気づかず、泣く。であれば、いつでも誠実であること、ありつづけること、自己にとり問うほど必要な手順はない。或いはその行為に幾分かナルシシズムが含まれていたとしても、主観のみの世界を他者のすべてとおもうものかは。

 「世のなかは知らないうちに操作されている。」

 わたしが言うと、彼は少々疲れた顔でこちらをみた。

 「君はまた妙なことを言うね。」
 「或いは妄言だと自覚しているつもりなの。」

 だとすれば考えすぎとしか言いようがないな、と彼は言った。

 「だいたい、世のなかの理をそのちっちゃな脳みそで処理しようとしすぎている。」
 「わかっている、けれど、そうしないと間に合わないもの。」
 「君はいったいなにに追われているんだ。」

 問われ、幾秒か考えると死、と出た。

 「殺される予定でもあるのか。」
 「殺されても文句は言えない。」
 「たくさんのひとを裏切っているのか。」
 「自覚はない。」
 「ならばいいじゃないか、実際だれか殺したわけでもあるまい。」

 面倒くさそうに彼は言う、ちっともわかっちゃいない、おもう。現実は常に数々の修羅場をかいくぐっている、実感がないのは、あまりにあたりまえに生きているから。歪みを考えないから。

 「ちがうの、錯綜しているの、せめぎ合っているの、みえるの、力になりたいの。」
 「だからなんだ。」
 「わたしはわたしの誠意を尽くす。もうあとには引けない。」
 「泣き虫のおまえがか。」
 「そういう役割を担いつづける。担いつづければ本物になる。」

 勝手にしろ、彼は言った。ずいぶんと投げやりだった。わたしは現実のもどかしさをこころでぐっと堪えた。それでも、おもったことは怯まずやってみたい。殺されたらその程度の人生なのだ。