未題

短編より短い短編小説

逆手の意思

 2日間しっかり8時間ずつ寝たらすっきりと朝目覚めることができた。睡眠にまわした時間により断念したことは多々あれど、目先の健康を差し置いてまで取り組むべきことではない。もし必要以上に自分を追い詰める者があるとすれば、その者自身が焦っているか、或いは言外に含蓄されたことばの意味を本人が必要以上に感じ取っているだけだ。

 根性ですべてを解決する時代はおわった。というより、世のなかは時代によりおおよそ100年周期で1回転するものだけれど、もし自身が根性を叩き込まれ育てられた世代ならば、根性そのものを生業にしてはならない。

 「こんな感じでどうですか。」
 「うん、いいんじゃない。」

 プレゼンに必要な箇所をもう一度確認しながらわたしはホッとひと息吐いた。

 「それにしても、あんたっていつもながら矛盾してる。」
 「大丈夫ですよ。わたしのほんとうのところなんてだれもわかっちゃいないですから。」

 ふん、と鼻を鳴らすと、たしかにそうだ、と先輩は笑う。

 「根性だけで生きてるくせに。」
 「自分のなかのね。他者にとやかく言われる筋合いはない。」

 素直じゃないなあ、と先輩は言う。

 「突っ込まれたくないんですよ、だれにも。そして、突っ込まれないためには自ら先手を打つしかない。」
 「傲慢だよねえ。」
 「傲慢で結構です。わたしの命ですから。」

 にししと笑うと、まあ自己責任ってそういうことかもしれないけど、と前置きしてから先輩は言う。

 「ぶっ倒れないでよ。」
 「保証しかねます。」
 「あんたいま調子乗ってるでしょ。」

 問われ、ぎくりとした。このひとには敵わないなあとおもいながら、乗ってます、正直に答えると「そこは素直かよ」と先輩は笑う。

 「自分で調整してよ、圧は。」
 「はい。」
 「他者に惑わされるなよ。」
 「はい。」
 「あんたの本気でいけよ。」
 「はい。」

 そして感謝のこころ!わたしが叫ぶと先輩がどっと笑った。

 「セブンイレブンのサラダチキンをめざします。」
 「……というと?」
 「あのパッケージ、ずいぶん開けやすくなったとおもいませんか。すこし前はしょっちゅう手こずっていたけれど、いまはすんなり開けられる。進歩ってそういうものだなあって。」

 なるほどね、と先輩は言った。

 「なにより抜群においしい!」

 あはは、と先輩は声を出して笑った。わたしもおかしくなって笑った。