読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

未題

短編より短い短編小説

確執の隙間

 「ねえ、遊ぶってどうやるの。」
 「あんた、遊んだことないの?」
 「遊ぶっていったいなにかわからない。そうおもったことはない?」

 わたしが尋ねると、姉ははあ、とため息を吐き面倒くさそうに目をすがめた。

 「あんた、そんなんだからともだちいないんだよ。」
 「うるさいなあ。」
 「カラオケとか。いってるでしょう、よく。」
 「うん、ひとりカラオケ。いってる。」
 「ああいうのが遊びっていうんじゃない。」
 「そうなの?でもわたし、カラオケは目標をもってやってるよ。あれはわたしのなかで遊びじゃなくって本気。」

 姉はへの字に口を歪ませた。

 「でも、歌手めざしてるわけじゃないんでしょう。」
 「めざしてるわけじゃないよ。でも、結果としての歌手はあり得る。」
 「そりゃまた、おめでたい頭だねえ。」

 姉はまいった、というように両手をあげた。意味のわからないアメリカンジョークみたいだった。

 「そもそもプロってめざすものなの?」
 「どういう意味よ。」
 「志しひとつでだれでもプロじゃないの?」
 「それは自己満足でしょう。」

 もちろん!とにっこり笑うと、なによそれ、と姉がいなした。

 「じゃあだめじゃん。」
 「だめなの?」
 「だってまわりにプロだって認められてない。」
 「まわりってだあれ?」

 あのねえ、と言うと姉はすこし苛立った口調で言った。

 「あんた。それ“あげ足取り”っていうんだよ。」

 ……ごめんなさい。

 わたしはしゅんとすると、ちいさくなったまま俯いた。

 「わたしってプライドが高いんでしょうか?」

 となりに座る彼女に尋ねると、うん、とすぐ返事がかえってきた。わたしはやっぱりしゅんとして、ずきずき痛む傷を堪えた。

 「そうですか。気をつけます。」

 へらりと笑う。

 二週間後の帰り道、鮮やかに思い浮かぶ光景にわたしの視界が滲んだ。どうしたらよいかわからないやるせなさがあった。反省するにも、もう何千回と言われているのでどうしようもないところがあった。
 きっと鼻につくのは仕方ないことなんだ、そう感じながら、ごみ箱に捨てられたランドセルとか、投げつけられた石の数を思い出し歩く。

 家に帰ると姉が待っていた。わたしがただいま、と言うと、あんたまた泣いて帰ってきたの、と姉は笑った。夕飯のハンバーグがおいしかった。