読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

未題

短編より短い短編小説

ある日のLINE

 「おねえちゃん、いまなにしてるの。」

 午後1時ごろ、LINEの着信音が鳴った。滅多に鳴らないそれを確認すると妹からだった。

 「ふきげんな過去、みてる。」
 「なにそれ、不機嫌なの?」
 「ううん、映画。TSUTAYAで借りた。」

 なるほど、と白うさぎのスタンプがぽんと押される。

 「ねえいま休憩中。」
 「そっか、がんばってるね。」
 「褒めて褒めて!」

 なでなで、と黒猫が白うさぎを撫でるスタンプを押す。

 「おねえちゃん、わたしそろそろバイト辛い。」
 「どうした?」
 「おばさんのひとが愚痴ばっかり言ってくる。それきいてるの辛い。」
 「愚痴きくのって案外精神力つかうんだよねえ。」
 「そうなの、そうですねって頷くにも疲れちゃうの。」

 黒猫でおつかれさま、のスタンプを押す。

 「ねえねえおねえちゃん。」
 「なあに。」
 「おねえちゃんだいすき!」

 唐突な告白にわたしはスマホを二度見すると、黒猫が“!?”と驚いているスタンプを5つ連打した。

 「あ、いまはね。」
 「は?」
 「いまの一瞬だけすき。」

 しょぼーん、と白うさぎが落ち込むスタンプを押す。

 「でもね。」
 「なになに?」
 「大切にしたいとはおもってるよ。」

 わたしはまた黒猫が驚いているスタンプを5つ連打した。

 「だってすきとかきらいは一瞬一瞬で変わっちゃうの。でも、大切にしたいは変わらないから。」

 スマホの画面をみながら一時停止していると、白うさぎがきゃぴきゃぴ笑顔をみせるスタンプがぽんと押された。

 「たまにすごいこと言うよね。」
 「え?」
 「いや、いいわ。バイトがんばれ。」
 「うん!」
 「あ、がんばらなくっていいや。」

 今度は妹が、黒猫が驚いているスタンプを押した。

 「やりたくないならやらなくってもいいよ。」

 わたしが言うと、白うさぎが“?”と首を傾げるスタンプが押される。

 「でも、やりたくないことでもやらないといけないんじゃない?」
 「べつにいいよ。大切にしたいひとがいるだけで十分だよ。そのひとたちを幸せにしていけるようがんばろう。そのなかに労働がはいるなら、それもがんばろう。」
 「おばさんの愚痴きくのは?」
 「あとは自己判断でよろしく。」

 なにそれー、と妹は言った。既読にしてから、わたしはそっとスマホを閉じた。