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未題

短編より短い短編小説

特異さがし

 「おめでとう!君は7000人のなかの300人に選ばれました。もちろん承諾するよね?」
 「ありがたいはなしですが、お断りします。」

 わたしが即答すると、恰幅の良い男は怪訝な顔で首を傾げた。雑誌の並んだローテーブル、目の前にはその男と、となりには若い女性。カラコンにまつエク、身なりを整え109のギャル風、けれど仕事はできそう。

 「君、本気で言っているの?7000人中300人、確率的には上位4%だよ。」
 「はい。ですから、ありがたいとはおもいますが、お断りします。」

 再度言うと、男はすこし怒った口調で問い詰めはじめた。

 「君ねえ。ちょっと自分を買い被りすぎなんじゃない?たしかにぼくは君の才能を認めたよ。素質はある。けれど、考えてもみてよ。いまの君はただの原石、そこらの石っころと変わりやしない。」
 「はい。わかっているつもりです。」

 言うと、女性がわたしの全身をまじまじと眺めた。そのようすをみた男がつづける。

 「君、格好もさ、もうすこしやりようあるでしょう。」

 さすがに目眩がした。これでも一張羅を着てきたつもりだった。ジーパンにTシャツ、ヒールのサンダル。着飾るというより躍動感を押し出すスタイル。どうやらそういうわけにはいかなかったみたいだ。

 「上位4%と言いますが、わたしには確率論としての宝くじを買う気がそもそもないんです。」
 「けれど磨くことで確率を上げるのは不可欠じゃないのか?」
 「はい、そうおもいます。」

 わざわざ先方に出してもらったペットボトルのお茶をごくりと飲んだ。十分良くしていただいていると、自分なりにわかっているつもりだった。

 「それでも上位4%じゃだめなんです。相手は確率で選ばない。その理由が必要なんです。」

 きっぱり言うと、男はさすがに黙った。これ以上話しても不毛だとおもったようだ。

 「オーケー。じゃあ気が変わったら連絡して。これ、名刺ね。」

 受け取った名刺には見慣れたロゴが印刷されていた。きっとこの名刺のほしいひとが世のなかにはたくさんいるのだろう。

 「失礼しました。」

 退出すると、わたしはがっくり肩を落とした。そして無理やり顔をあげると、つぎがあるさと呟いた。極力明るく呟いた。