未題

短編より短い短編小説

お天気や

 「無断欠勤ありえません。」「メール連絡ありえません。」「社会人たりえません。」

 一旦切れた意識を手繰り寄せるよう猛追することばの羅列にあの感覚が蘇ってきた。いつもいつもわたしはおんなじ失敗をする。はじめは笑っている、愛想よくいられる、相手の傷に寄り添える。けれどあるときぷつりと絶える。
 業務中にもかかわらずトイレに駆け込むとおもいっきり泣き叫んだ。なんでなんでなんで、どうしてどうしてどうして、もうやりたくないの!やらなくっちゃいけないの!でもやりたくないの!
 叫んで叫んで地団駄踏んで、自分を殴って殴って殴って、それでも涙はとまらなくって、嫌で嫌で嫌で死にたくって、死ねなくって、適応しなくちゃいけなくって、こんな辛さを乗り越えて生きる社会人ってほんとうにすごいとおもった。

 おうちに帰るとくたくただった。翌朝は目覚めなかった。大事じゃない。あのひとたちはそんなに大事じゃない。誇りをもって働いてない、目標をもって働いてない。わたしの大事なものあのひとたちは大事にしない!あのひとたちの大事なものわたしも大事じゃない!

 おもわず出た舌打ちに妹がどうしたの、と問う。

 「いまおねえちゃん嫌なことしてるの、とっても嫌なことしてるの。」
 「なんだ、パズドラやってるとおもった。」
 「ちがうの、嫌なこと思い出すことしてるの。嫌なの。だから舌打ちしてごめんね。」

 妹はふーん、と言った。

 「ねえ散歩しよう。気分転換に。」

 わたしが言うと、そうだねと言う。じゃあ準備するねと立ち上がると、わたしのこころの深いところから突然、信じられないくらい深い哀しみが込み上げてきた。徐々に暗雲が立ち込め、雷が落ちる。瞬間、わたしははち切れるよう泣きはじめた。

 妹がびっくりしている。こどもみたいにびーびー泣くわたしの姿をみて、妹がすかさずよしよし、と言った。

 「よしよし、よしよし、おねえちゃんよしよし。」
 「わーん、わーん。」
 「おねえちゃん、よしよし。おねえちゃん、よしよし。」
 「わーん、わーん。」

 このやり取りを7回ほどくりかえしたところで突然、わたしの雨がやんだ。

 「お散歩いこう!」

 哀しみが晴れた。先ほどとは打って変わって、今度は嬉しくなりわたしは妹に笑いかけた。妹はうん、と頷くとふたり揃って雨降るまちにくりだした。