未題

短編より短い短編小説

信じる意思

 「わたしのアイデンティティはがんばることだけ、だから、がんばれなくなったらもう用済みなの。」

 電話口で、彼女は黙っていた。これまでため込んだ苦しみがおもわず涙としてこぼれる。

続きを読む

決断力不足

 この世はまっくろけだよ。どうせまっくろけだよ。きれいにみせることができるだけだよ。感情の美しさに愛の湧くほんの瞬間だけ、あとはどんよりよどんでる。

続きを読む

生還の代償

 自らの叫びを発することにより一瞬は落ち着くけれど、その後自身の発言がどんどんと退路を断っていく現実に気づく。さっと青ざめ、冷めたもうひとりの自分が、毎分毎秒トランスにはいりつづけるのを酷く斜に構えてみている。

続きを読む

本能的拒絶

 疑心暗鬼がとまらない。特定のだれかに向け疑いの念をかける感覚に慣れない。いままでは逃げてきた、こわくなったら信じなければよかった。どちらにせよ理性でひとは信じられないけれど、遠まきに距離を取ることで凌いできた。ほんとうに信じて差し出して、ぐちゃぐちゃに引き裂かれた哀しみを背負うなんてこわい。もうしたくない。

続きを読む

重ね重ね

 ろくに休めちゃいないくせ追いうちをかける業務メールに面喰らい、なにか差し出せばそれだけさらに高いハードルを課せられる期待の片鱗を垣間みて、わたしはぐう、と唸った。予測していなかったことがどんどん起こる、こりゃすごい。

続きを読む