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未題

短編より短い短編小説

キリトリセン

 遠く離れた田舎町にひとり、内見予約を入れる。いまだ定職なし。それでもなぜかとびっきりの希望を抱え問い合わせると、向こうは朗らかに受け取ってくれた。顔もみえないやり取りで物件を手配してくれた。ほんの1時間の内見で、段取り鮮やかに案内してくれた。

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闘志の色

 どこか見覚えのある顔だった。何度もみたことのある顔だった。もしかしたら、とおもったけれど言わなかった。他人の空似かもしれない。けれど彼女が自身を紹介すると、やはりテレビでみた彼女だとわかった。

 「わたし、この仕事以外考えられないんです。」

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ノスタルジア・ブルー

 18.5帖の広々リビングにグランドピアノ、いつでも飲める水素水生成器設置、お菓子づくりに便利なオーブンレンジ付、夢のカウンターキッチンで食卓の準備もらくちん。しかも3LDKの11階建て最上階、夏はベランダから花火の一望できる海沿いのマンション。

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ひとりよがり

 わたしは自分でも意識しないうちに大層甘やかされて育った、いわゆる箱入り娘だ。わたしをわがままな娘に育てるため、父なんてわざわざ占い師のもと、わがまま娘に育つ名前候補を打診しにいったくらいだ。その甲斐あってわたしはひとの好意を受け取るになんの疑いももたない世間知らずなおとなになった。

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怒りVS.怒り

 「自分ばっかり被害者ぶらないでよ!」

 言ってからしまった、とおもった。ただでさえ余裕のない人間にいまのことばはやりすぎだ。案の定彼女は憤慨すると、沸騰したやかんのように怒鳴り散らした。

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