未題

短編より短い短編小説

作為的策士

 まわりをみると天才だらけだった、天才だらけでどうしようもなかった。天然は武器だ、脅威だ。本人にさえ気づかない強烈な魅力を発しながらまわりを巻き込んでいく。良きひとのところには良きひとが集う。そのようすを目の当たりにし、我ながらびっくりしている。

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お裾分けの輪

 ふんわりタバコの香りがする。となりに座るサラリーマンが一日しこたま背負った疲れを、わたしの肩にあずけている。お疲れさまです、おもう。お仕事ありがとうございます。
 たまたまとなりに座った彼の日々の事情など知らないけれど、時折がくんと頭を落とすその仕草を愛おしくおもう。みんながんばっている、みんな闘っている。もちろんわたしも。きょうもお疲れさまでした。

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覚悟のアップデート

 頭が弾け飛んだ、同時にスマホをなくした、歯がぽきりと折れた。物事は連なるものだ、或いは、それまで頑なに拒んでいた力が反作用で瞬発する。懐疑的である、故に妄信的である、二律背反する思想のバランスが取れるときひとははじめて素直になれる。含蓄することばを汲む、すべてにおいて観察する、理屈を、筋を、落とし込む。あらゆるところに糸口は用意されている。

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余剰の心配

 朝の3時に大福をたべる。4時にパイの実をたべる。5時にバウムクーヘンをたべる。現実が夢みたいで、信じられなくって、全然ねむれない。いっそのこと起きてしまえ、きょうだけは乗り切って、あすは存分に寝てしまえ。

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高圧的説法

 いまの幸せはあたりまえじゃない。あたりまえだとおもった瞬間、わたしは腐る。ひとの才能なんて不確かなものはちっとも信用できないけれど、もしこんな環境を手にしたとして、それが長らくつづいたとして、だとしたら人生において世界のだれをも魅了する一篇の詩を書くことよりいまこの瞬間にこそ至上の価値ある、わたしはそうおもう。

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